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ベンガラ柿渋塗りしました

柿渋座のメイン活動であります外壁のベンガラ柿渋塗りをしました。今回は約30名の柿渋座メンバ-にお集まりいただきました。

猛暑に備えて柿渋座のぼりと寒冷紗で日除けを設けたのですが、その姿は戦国時代の合戦本陣さながらの様相。坂本善三美術館の景観と調和するように、素直な選択をすると江戸時代にタイムスリップするんですね。建物の持つ力は時空を超えます。

ベンガラ柿渋については、前回の稿(ベンガラ柿渋塗り考)をご覧いただくとして、早速外壁塗りに取りかかります。今回の作業では柿渋座心得として「一人一人が作品作り」を掲げました。誰かと競うわけでもなく、誰かにやらされるわけでもなく、自分自身と向き合って集中して一つの作品として仕上げていくこと。そうして町の美術館として長い間多くの人の目に触れ続ける公開作品を作りましょうよと。これは公共の建築物ではなかなかない貴重な機会なのです。

いざ作業に取り掛かるとみなさん夢中で取り組まれてました。玄関周りを担当された方が「玄関は光栄だから特に綺麗にしたい」と張り切ってあったことや、彫刻の細かな部分を「ここも塗って綺麗にしたい」と進んで仕上げて頂いたこと、その他にもいくつもの素敵なシ-ンがありました。ほんとうに嬉しいことに柿渋座は着々と自主性のあるチ-ムに育っています。

同時進行で、ベンガラの焼成実演をして黄土が赤褐色に変色していく様子を体験したり、おまけ企画で柿渋染めを体験しました。休憩多めに会話も楽しんであっという間の3時間の活動でした。今回は一番目立つ美術館本館の正面縁側周辺をベンガラ柿渋塗りしました。次回は柿渋の原液を上塗りして仕上げる予定です。

暑い中ご参加いただいたメンバ-の皆さまありがとうございました。みなさんの手で綺麗な姿に仕上がり建物も喜んでいます。外壁塗りは継続して新たな局面も向かえます。興味のある方はぜひ次回ご参加ください。どうぞ柿渋座をよろしくお願いします。

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作業工程の図解
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作業手順と心得えをお伝えするオ-プニングレクチャ-

 

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ベンガラ柿渋調合場
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ベンガラ柿渋塗り風景
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ベンガラ柿渋塗り風景
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細かな細工のある部分は入念に
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玄関周りは丁寧に
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親子の共同作業も
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夫婦の共同作業も
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ムラなく塗られた外壁
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丁寧に塗上げられた木鼻
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ベンガラの焼成実演
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焼成すると赤褐色に変色する
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柿渋染め体験コ-ナ-
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ベンガラ柿渋塗り完成
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今回お集まりいただいた柿渋座のみなさん 充実した表情です

 

 

ベンガラ柿渋塗り考

いよいよ柿渋座の本丸であります「柿渋塗り」が始まります。そもそもなぜ柿渋塗りなのか、どうやるのか、結果得られる効果について考えてみようと思います。

1.なぜ柿渋か?
まずは、坂本善三美術館の建設当時の資料を調べてみることに。作品として掲載されている住宅建築1995年10月号で外壁板壁の仕上げを見てみると、「クメゾ-拭取り」と記述されていました。クメゾ-とはなにか。調べてみると幻の伝統塗料「久米蔵」なるものを意味しているようです。「久米蔵」は自然素材のみを原料とした植物油を一切使わない完全水性塗料であり、着色塗り+仕上げ塗り(柿渋)という工程を踏みます。現在の板壁に残っている塗料の具合(触ると手に色粉が付着する)や、ベンガラ柿渋の経験者へのヒアリングなどから勘案して、当館に塗られているのは「ベンガラ柿渋塗り」であろうという結論に至りました。

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「クメゾ-拭取り」仕上げの記述 「住宅建築1995年10月号」より
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開館当時の写真 黒味の強い茶色で塗られている
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開館当時のアップ写真 黒味の強い茶色で塗られている

2.ベンガラ柿渋塗りの準備
そこで今回は柿渋にベンガラを混ぜて塗る計画としました。
用意するのは、柿渋・ベンガラ・墨汁(本来は松煙ですが希少で高価なので代用)です。

着色の肝となるベンガラは、あらかじめ原料の黄土を土鍋で焼いて作りました。(柿渋座では七輪を使ったベンガラ作りも体験して頂く予定です。)出来たベンガラをふるいにかけて、残ったダマは乳鉢またはすりこぎで潰します。ベンガラだけでは赤茶色なので、今回は建設当初のイメ-ジに近づかせるため、墨汁を使って黒味を加えていきます。原料自体に個体差があり、配合を数値化しにくいことから、色調合は絶対的な冴えわたる勘を信じて行いました。実際それしかない。。ベンガラと墨汁を混ぜて作った「色種」に、柿渋を混ぜると「ベンガラ柿渋」の出来上がりです。

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右から、柿渋(昨年我々が作ったもの)・ベンガラ・墨汁
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右が黄土、左が焼いて出来たベンガラ
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乳鉢でベンガラのダマをつぶします
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ベンガラに柿渋を少々入れて混ぜたところに墨汁を投入
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着色の肝となる色種

3.ベンガラ柿渋を塗ってみる
外壁面を空雑巾でこすって、手に付着する粉成分を拭き取ります。
マスキングテ-プとビニ-ルでばっちり養生したらいよいよ外壁に塗っていきます。ベンガラが沈殿しやすいのでこまめにかき混ぜながら木目に沿って刷毛で塗ります。細工の細かい部分は雑巾で摺りこんでも良いです。塗ってしばらくしたら、ムラやダマが目立たなくなるように雑巾で摺りこむように拭きます。しっかり乾燥したらもう一度塗って拭き取ります。仕上がり具合を見て2回塗りまたは3回塗りとします。これで着色工程は終わりです。

続いて仕上げの柿渋塗りです。着色したベンガラはそのままでは雨風で落ちやすいため、柿渋で表面に薄いコ-ティング膜を張る必要があります。我々が去年作った柿渋も不完全な品ではありますが、しっかりと強い膜を張っています!よし、使える!

数日すると色が濃く安定してきました。ベンガラ柿渋を塗ることで、着色による美観向上、柿渋の膜による耐水性の効果があることが確認できました。他にも防腐性や除菌効果などあるようですので期待して継続観察したいと思います。

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試しに塗る展示棟北側の外壁 柿渋座のポスタ-そのまんま

4.おまけ
ここまで読んで頂いたあなたに柿渋座秘伝の裏技をお伝えします。
ベンガラ柿渋は原料の準備から塗装拭取りまで意外と手間がかかります。そこで編み出したのが「墨汁柿渋塗り」工法。柿渋に墨汁を混ぜて塗るというもの。着色と造膜効果があります。改善すべきは、墨汁が分離するので、アルコ-ルを少々混ぜると良いのではないかという点です。今後も研究の余地ありです。

足場を作っています

今回、外壁ベンガラ柿渋塗りの為に柿渋座オリジナル足場を製作しています。

素材に何を用いるか。
これはモノを作るうえでとても大切なことです。
どれくらいの強さが求められるか。長い年月に耐え得るか。容易に扱い易い架構であるか。そして美しく普遍性の備わった形態であるか。そんな事を考えて素材を選択します。

私は「三匹の子ぶた」の絵本が大好きです。子ぶた達はそれぞれ、ワラ・枝・レンガを用いて小屋を作りオオカミに備えます。絵本ではレンガで作った頑丈な小屋だけがオオカミから難を逃れます。それは一見、レンガが一番優れているかのように思えます。しかし、オオカミがいない土地に作る場合はどうでしょう。ワラの家のほうが涼しくて快適かもしれませんし、枝の家のほうが一人で作れて良いかもしれません。ではなぜ、子ぶた達はそれぞれに違った素材を選択したのでしょうか。絵本にはこう書いてあります。「そこにあったから」。土地に順応して使われる素材は変わります。それはその地における最適解である事も多いのです。

前置きが長くなりましたが、今回使用する部材は坂本善三美術館のある小国町の杉材にしました。一般的に間柱として流通している90mm×30mmのみを使用します。最小限の手数で加工・組立てし、多様な用途に使えるように考案しました。正三角形で構成する大小の梯子を基本ユニットに、高低差のある縁側をまたぐ足場、高い足場、低い足場、テーブル、そして柿渋貯蔵庫と変幻自在に使用する予定です。

現在、試作品1号が完成しました。改善や発展のアイデアを探りながら、これから2号、3号を製作していきます。坂本善三美術館の一角で公開製作となりますので、近隣で興味関心のある方はぜひいらしてください。ご指導、愛のムチ、冷やかし、冷やもの差入れなんでも歓迎です。すべては柿渋座の充実に繋がります。まいどありがとうございます。


足場公開製作

日時:2018年7月14日 午前9時頃から夕方まで
現場:坂本善三美術館のどこか
作業員:たねもしかけも
※晴天が続きます。来場の際は各自熱中症対策をお願いします。
猫の手もお借りしたいのでそこのところ宜しく御願いします。

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基本ユニット構成部材の1/10模型
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試作足場1号 組立て状況
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試作足場1号 完成イメージ

柿渋座はじまりました

柿渋座の第一回目開催しました。

今回は、今後の柿渋座活動でユニフォームとして使えるようにメンバーの私服を柿渋で染めました。

今回メンバーとしてお集まり頂いたのは町内外から総勢約70名の方々。なんと二時間半かけて来られた方もいらっしゃいます。もうみなさん柿渋に対する関心と愛情が溢れ出ています。ありがたいことです。

初めて柿渋という言葉を耳にした方や、子供のころ親が漁網を柿渋に浸けていた記憶がある方、柿渋を飲んだことがある方など、柿渋との関わりも様々。年齢・性別も様々。生徒さんも赤ちゃんもいます。柿渋という共通項で集まる多様性のある場所、それが柿渋座です。そう願っていたらそうなりました。ほんとうにありがたいことです。

はじめに柿渋座の趣旨として「共同体作業の現代的価値を再提示する展覧会」であることをお伝えしました。これは柿渋座が単にモノづくり教室やボランティア活動だけではなく、近年失われつつある「結」のような共同体作業に取り組むことで、現代社会に対して価値観を揺さぶる可能性を秘めた表現活動なんですよという事です。もちろんメンバーは作業に没頭して、ああ今日も楽しかったと豊かな気持ちになる、それが基本です。しかしその光景が第三者の鑑賞する眼差しに出会った時、心動くものがあるのではなかろうかという事です。

続いて、「たねもしかけも」の意味について説明しました。建築には、即物的なモノとしての「たね」の美しさと、物語や仕組みといった「しかけ」の豊かさの両方が必要です。現代の建設システムではなかなか我々素人が「しかけ」に関わる機会が生まれにくいのですが、柿渋座では「しかけ」の当事者として主体的に取り組んで頂くことで、成果としての「たね」を実らせるきっかけになることを期待しています。

以上の熱き想いをお伝えしたのち、お待ちかねの柿渋染めをスタート。柿渋座では出来るだけ多くの工程をメンバー自ら作業して頂き、深い理解と自主性を育むことが出来るようにしています。ありがたいことに協力的な方が多く、なんともスムーズに進行して、時間いっぱいまでみなさん作業を愉しんで頂きました。

今回、柿渋染めに参加できなかった方も、次回以降の活動の際に随時染めて頂けるよう対応したいと思ってます。可能な回に可能な分だけ是非ご参加ください。柿渋座をどうぞよろしくお願いします。


▷次回: 外壁を柿渋で塗ろう

とき   2018年7月22日(日) 13:00-16:00
ところ  坂本善三美術館
もちもの 柿渋ユニフォーム、軍手、飲み物
参加費無料、定員無し、要予約
※予約・問い合わせ 坂本善三美術館 0967-46-5732

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作業工程とコツの図解
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柿渋染めエリア
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みんなで組み立てた竹物干しエリア
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それぞれの作業を持ち回りで体験します
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柿渋座のぼりの刷毛染めエリア
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柿渋座メンバーで記念撮影 キラキラです

試し染めしました

いよいよ6月17日に開催が迫った柿渋座「柿渋染め編」に向けて試し染めをしました。
梅雨の貴重な晴れ間、絶好の染物日和です。というのも柿渋は日光に当たるほど発色が良くなるので天気が大切なのです。

今回は試し染めということで二種類の柿渋で染めてみました。

まずは、先日八女ツアーで入手した中尾さんの柿渋、通称「中尾渋」です。
中尾渋の原液を水と2:1の割合で薄めて、水洗いした布物をザブンと浸けます。
しばらく浸した後、絞らずポタポタのままハンガーに吊るしてシワを良く伸ばします。
あとはお天道様におまかせ、というのが工程です。ごくごくシンプルです。

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水で薄めた中尾渋
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チャプチャプと浸します
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ポタポタのまま引き上げます

続いて、昨年我々が作った柿渋、通称「善三渋」で染めてみます。中尾渋に比べると赤みが少なくミルクティーのような色をしています。同様にザブンとつけてポタポタと引き上げる。実にシンプルです。

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「善三渋」手前から二番渋、一番渋、一番渋
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表面の膜をそっとめくって、チャプチャプ
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ポタポタのままハンガーにかけます
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それぞれ左手が中尾渋、右手が善三渋
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左手の中尾渋のほうがうっすら赤みがつよいです

しばらく日光に当ててみて色が変化していく様子を観察してみます。当日みなさんに染めていただく柿渋はどちらになるか、お楽しみに!



それから当日みなさんにはもう一つの染め体験を楽しんで頂こうと思います。それは、「柿渋座のぼり」の刷毛染めです。柿渋座のロゴマークが入った大きなのぼりです。

染め抜くロゴ部分はヌカと米粉を蒸して作られたノリを塗りつけます。薬莢を口金として再利用した「筒」でロゴを縁取りして、残りは指で塗り付けていきます。こうしておくことでノリのついた所には柿渋が染込まないようにします。

こののぼりは柿渋座の会期中、坂本善三美術館の玄関近くではためく予定です。ぜひ6月17日は柿渋染めに参加し、刷毛で自由に描いて頂きたいと思います。ご参加お待ちしております!

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甘酒のような匂いのノリ
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筒を用いて縁を取っていきます
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ノリ付け出来ました。染めるのはアナタ!

 

 

 

柿渋の旅:八女編その2

柿渋のイロハを学びに柿渋先進地の八女市に行ってきました。

次に訪れたのは、柿渋を製造販売されている八女市立花の中尾酒店さん。作業場で柿渋作りのポイントを教わりました。柿渋は年に一度、お盆前に集中して作られます。その時期の未熟で青い渋柿には、渋み成分であるタンニンが最も多く含まれているからです。中尾さんは小ぶりで渋みの強いニエという渋柿を原料にされます。昔、作業場に近いに仁合(ニアイ)という集落にあった農業試験場で品種改良された渋柿です。

中尾さんの柿渋作りの工程はとてもシンプルです。収穫した渋柿を出来るだけ早く潰し割り、去年の二番渋に24時間浸します。渋み成分が抽出された上澄み液をタンクに移してそのまま放置すると完成です。文字にすると簡単ですが、長年にわたりやってきて掴んだ勘所がすべてです。例えば、柿渋は金属に反応するので使う道具はすべて非金属です。渋柿を潰し割るお手製の機械も圧搾部分は石で作られていました。塩分も成分が変化するため接触させません。

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お手製の圧搾機
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石で作られた歯車の圧搾部分

今では貴重品となった渋度を計る道具を使って製品管理されています。温度計の先端に不思議な小粒が入っており、柿渋に沈めると渋さの分だけ浮かんできます。浮かんだ時の目盛りを読むと渋度が分かる優れものです。中尾さんの柿渋は2.5度にしているそうです。

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渋度計の先端
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渋度を計っている様子

実は、柿渋座も昨年のお盆に柿渋を作って坂本善三美術館の敷地に貯蔵しています。その柿渋を中尾さんに品評していただきました。一年物にしては色味が非常に浅く、匂いも強くない。これは果たして柿渋になっているのか不安を抱きつつ、渋度を計ると1.7度というまずまずの結果。しかしなんか変だという感触でした。

最後に、柿渋座で外壁に塗るための貴重な柿渋を分けていただきました。ありがとうございました。

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一年物柿渋のポリタンク内部
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柿渋を小分けにしている中尾さん